数値解析ソリューション
仮想ドレーンモデルを用いた予測
トンネル掘削時の湧水量予測や周辺の地下水環境への影響を評価するにあたっては、3次元浸透流解析を用います。 ただし、分水嶺まで距離がある場合やトンネル延長が大きい場合などでは、解析領域が広くなる一方で、トンネル周辺では細かい要素分割が求められます。 また、複雑な地質モデルを対象として要素分割を行う場合や、地質モデルを更新して再度要素分割を行う際に、多くの労力と時間が必要です。この問題を解決するために、トンネルをモデル化せず仮想的にトンネル掘削を行う方法を考案しました。
トンネル形状を問わない湧水量予測
トンネルの線形と断面、および掘削速度を指定するだけで、トンネルをメッシュ化した場合と同等の解が得られます。要素分割や分離が可能であるため、立坑・斜坑、スパイラル状などの掘削方向や形状、地質構造に関わらず、湧水量の予測が可能です。
仮想ドレーンからの湧水量の算定
広域の地質モデル作成後、分水界を境界として最小辺長5D(D:トンネル径)程度のメッシュを作成します。要素の物性値は、地質モデルから反映します。 トンネルの線形と交わる要素に対しては、下に示した式に基づき湧出する地下水量を求めて、要素内での損失量として処理します。この方法の利点は、次のとおりです。
- トンネルのメッシュを作成しないため、広域を対象とした解析でも要素数を抑制できます。また、要素サイズが大きいため、Δtを大きくとることができ計算を高速に行うことができます。
- トンネル掘削の進行に対して、境界条件やメッシュを変えることなく計算を続けることができます。地質モデルを更新した場合でも、既存のメッシュへの物性の反映を変更するだけで解析ができます。
- トンネル外側に、改良工などにより透水性が低い領域が形成される場合にも対応できます。
3次元解析での仮想ドレーンからの湧水量の算定
トンネルを詳細にモデル化した場合と仮想ドレーンモデルを用いた場合に、トンネル掘削を模擬した3次元浸透流解析において、計算時間や湧水量予測などにどの程度の違いがあるのかを調べました。 詳細モデルではトンネル部の要素を削除しながら計算を行いますが、仮想ドレーンモデルではモデルの変更は必要ありません。 両者で湧水量や水頭分布に大きな差は無く、仮想ドレーンモデルでは計算時間が極めて短くなっています。