技術資料

やわらかサイエンス

盛土 -水と粒と地産地消とルール順守が大切-(中編)

担当:藤原 靖
2021.10

前編では身近な土木技術である切土・盛土と丈夫な盛土作りが大切なことを紹介しました。中編では締固める時の土の水分と粒径に注目してみます。

■丈夫な盛土にするには水が決め手

土は、土粒子と水と空気から構成されています。自然の地盤では全く水が無い状態や空気が無い状態の土はほとんどありません。土粒子の空間には量や割合はまちまちですが空気と水があります。そして土粒子には、水の表面張力によって土粒子がお互いにくっつき合う力(サクション)が働いています。
例えば砂の粒でできた土では、水分が全く無い状態では砂はサラサラで台形に盛ることができず低い山になります。少し水分を加えると手で掴むことができる状態になり、台形の形に盛った山を作ることができます。少し水を加えることで、土粒子がお互いにくっつき合う力が働いたためです。

丈夫な盛土を作るための土粒子の状態を図解

締固まった状態は密度(単位体積あたりの質量)の大きな状態です。締固める時の密度と水分(含水比)との関係には最適なポイントがあります。これを最適含水比といい、一番密度の大きい状態(最大乾燥密度)になる水の量です。このことが盛土では水が決めてという理由です。
乾燥密度と含水比との関係を調べるためには、突固め試験機を使って、土の水分、土を分けて入れる回数、突く器具の重量や回数を変えて試験を行い、締固め曲線を作ります。一般には、例えば、突固める回数が多いほど最大乾燥密度は大きく、最適含水比は小さくなります。

左:突固め試験機                     
右:突固め回数と最適含水比(地盤工学会・一部説明用に編集)
左:突固め試験機
右:突固め回数と最適含水比(地盤工学会・一部説明用に編集)

粘土質や火山灰質の土では突固める回数が多すぎると土の構造が破壊されて、土の強度がかえって低下することもあり、土の性質に応じた取り扱いが大切です。

■盛土の性質は粒径でも変わる

土には粗粒のものから細粒のものまでいろいろな土があります。粗粒なものは礫質や砂質の土で、細粒なものは粘土質や火山灰質の土です。
締固める強さが同じであっても、土の粒度が異なると締固め曲線が違ってきます。一般的に、粗粒の土ほど締固め曲線は尖った山形になり、細粒の土ほど締固め曲線は平らな山形になります。また粗粒の土ほど乾燥密度は大きく最適含水比は低くなり、細粒の土ほど乾燥密度は小さく最適含水比は大きくなります。

左:粒度と締固め曲線(地盤工学会・一部説明用に編集)
右:道路用盛土材料としての一般的評価 
左:粒度と締固め曲線(地盤工学会・一部説明用に編集)
右:道路用盛土材料としての一般的評価 

粒径が極端に大きいものは、礫が多く含まれている礫や礫質土です。重機での掘削ではショベルバケットによる掘削の能率が悪いので、より大型の重機が必要になります。そこでこのような土砂は、大規模な埋め立てや造成など利用されています。
粒径が比較的大きいものは、砂や砂質土で海岸砂丘の砂やマサ土などです。掘削は容易ですが、ショベルバケットの中で山盛りの形になりにくい性質がありますが、盛土の水はけは非常に良好です。
粒径が適度に小さいものは、普通土で粒度分布のよい土です。掘削が容易でショベルバケットの中で山盛りの形にしやすい扱い易い土です。
粒径が極端に小さなものは、粘性土と呼ばれるもので水を含みやすく乾燥しにくい性質があります。ぬかるみができ、重機の走行に支障が出たり、ショベルバケットに土が付着して掘削や運搬の効率が悪くなりやすい土です。しかし水の通りが悪いので、堤防のように低い透水性が求められる盛土には適しています。

後編では切土や盛土を行う場所の近くで土を使う地産地消が肝心であることやなかなか無くならない盛土に関係した社会問題について紹介します。

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