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やわらかサイエンス

隕石 -宇宙からの贈り物-(後編)

担当:藤原 靖
2020.08

日本で発見された隕石は34個です。古いもの新しいもの、大きいもの小さいもの、様々です。世界にはもっとたくさんあり、隕石ハンターが活躍しています。後編ではたくさんの隕石が発見されている南極での活動を紹介します。また世界の巨大隕石についても紹介します。

■南極の隕石

国立極地研究所の極域科学資源センターに南極隕石ラボラトリーという研究機関があります。国立極地研究所は東京の立川にあり、1973年に南極大陸と北極圏の観測を基礎にした科学研究と全国の研究者に観測の基盤を提供する使命をもって設立されました。南極隕石ラボラトリーは、特に南極地域観測隊が採集した隕石の保管や研究資料としての提供を担っています。南極ではたくさん隕石が発見されており、国際隕石学会に登録されている隕石の約70%に相当するそうです。日本は1969年にやまと隕石を発見して以来、現在までに、25,000個以上の隕石を発見・収集しています。

南極に落下した隕石は、表面の雪とともに圧密されて氷床の中に取り込まれます。氷床はゆっくりと深部から沿岸部へと向かいますが、山脈があると堰き止められ上昇します。上昇した氷は昇華して、固形分である隕石は残ります。そのため山脈の周辺部で隕石がたくさん発見されるそうです。広い氷床に落下した隕石が自動的に山脈というダムに貯まるということで、大変面白いですね。

日本の昭和基地がある地域には、やまと山脈、ベルジカ山脈、セール・ロンダーネ山地があり、この周辺が隕石の発見地域となっています。
南極で発見された隕石は、GPSで位置データ、画像、発見者名、日時を記録して、手で触れず直接チャック付きのポリエチレン袋に収納します。その後、隕石はすべて冷凍して持ち帰り、隕石の酸化を防ぐため研究所の還元雰囲気下の装置内で解凍されるそうです。

左:隕石が山脈周辺に集まってくるメカニズム、右:南極の昭和基地と周辺の山地山脈
左:隕石が山脈周辺に集まってくるメカニズム   右:南極の昭和基地と周辺の山地山脈

■世界の巨大隕石

世界にはこんな巨大な隕石が落ちてきたらどうなるだろうというような巨大な隕石が発見されています。その中で5大隕石といわれるものを紹介します。

■ホバ隕石
アフリカ南部ナミビアにある巨大隕石。重さ60トン、縦横約2.7メートル、厚さ約0.9メートル。1個の隕石としてはこれまで発見された中で最大、かつ地上で発見された天然の鉄塊としても史上最大。8万年前に落下してきたと考えられるが、衝突クレーターがない。

■カンポ・デル・シエロ(エル・チャコ)隕石
アルゼンチン北東部のチャコ州にある巨大隕石。カンポ・デル・シエロと呼ばれる多数の鉄隕石群の1つ。重さ37トン以上、世界で2番目。隕石群の総重量は60トン以上。今から4000~5000年前に、流星群の一部としてアルゼンチン北東部に落下したと推定。

■ウィラメット隕石
1902年にオレゴン州で鉱山労働者が発見。重さ15.5トンの鉄隕石は、米国最大の隕石で、世界でも6番目。ウィラメットバレーに住んでいたアメリカインディアンのチヌーク系クラカマス族の崇拝の対象。ニューヨークのアメリカ自然史博物館が所蔵。落下後100万年経過し、鉄とニッケルの核をもつ惑星または衛星が恒星同士の衝突の際の破片と推定。

左:ホバ隕石、中:カンポ・デル・シエロ隕石、右:ウィラメット隕石
左:ホバ隕石    中:カンポ・デル・シエロ隕石   右:ウィラメット隕石

■アーニートゥ隕石
グリーンランド北西海岸のヨーク岬の隕石破片の1つ。重さ31トンで、人間が移動させた中で最大の隕石。先住民イヌイットが所有していた「テント」と呼ばれる鉄の塊。ニューヨークのアメリカ自然史博物館所蔵。1万年以上前に落下したと推定。

■バクビリート隕石
重さ24トン、長径が約4.2メートルで、最も長い隕石。メキシコ北西部クリアカン市のセントロ・デ・シエンシアス(Centro de Ciencias)の建物内に展示。

左:アーニートゥ隕石   右:バクビリート隕石
左:アーニートゥ隕石   右:バクビリート隕石

隕石 -宇宙からの贈り物- の後編はここまでです。
南極の隕石はスケールが大きいですね。また世界には巨大な隕石があるのですね。巨大隕石の落下が地球に大きな影響を与えたのは想像に難くないですね。今回は番外編として隕石で作った刀について紹介します。

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