技術資料

Feel&Think

第6回 トンネル掘削と地表面沈下(1)

担当:里 優
2026.03

前回では、トンネルを無支保で「瞬時」に掘削した、という仮想的な条件で、トンネル周辺で生ずる可能性がある不安定現象を調べてみました。この結果、トンネル周辺の間隙水圧が減少するのを待たずにトンネル掘削が行われた場合には、トンネル周辺地盤で引張応力が発生し、地盤の破壊が起こることがわかりました。

今回は、トンネル掘削に伴って発生する地盤沈下に注目してみます。トンネル掘削に伴う地下水の流出により、トンネル周辺地盤では圧密が生じますが、この縮んだ分の体積が地表面沈下を引き起こします。この沈下を抑制するために、掘削前や掘削後に地盤の透水性を下げる処理を施したらどうなるかが興味の対象です。

まずは前回同様に、トンネルを無支保で「瞬時」に掘削した状態を生じさせ、その後に引き続き起こる変化を見てみます。
解析には、一定厚さで前後面の法線方向の変形を拘束した、いわゆる平面ひずみモデルを用いました。トンネル切羽より十分離れた距離にある断面を表現しています。

図1 解析モデル
図1 解析モデル

モデルの高さは110m、幅は150mで、トンネル径は10m、土被りは30mです。モデルの側面と底面は、法線方向の変位を拘束しました。また側面では、初期地下水位を地表面(モデル上面)の高さに設定するとともに、上下の表面は非排水境界としました。地表面では、降雨が0となる条件です。トンネル内面は、排水境界としました。

前回と同様に地盤は均一な弾性体(間隙弾性論に従う、詳細はFeel&Think*を参照)と仮定し、地下水流れと変形の連成解析としました。ヤング率は100MPa、ポアソン比は0.3、単位体積重量22kN/m3、間隙弾性定数αは1.0、Bは0.8としました。
*「疑似連成解析と仮想ドレーンモデル、第1回 変形と地下水流れの連成解析 参照

最初に、トンネル掘削後の間隙水圧の変化を見てみます。図2に示すように、掘削直後に高かったトンネル周囲の間隙水圧は、時間の経過とともに減少していきます。図3に示した地下水の流速ベクトル分布を見ると、掘削から時間が経過すると流速が小さくなっていくことがわかります。

図2 間隙水圧分布(左:掘削直後、右:10時間後)
図2 間隙水圧分布(左:掘削直後、右:10時間後)
図3 流速ベクトル分布(左:100,時間後、右:1000時間後)
図3 流速ベクトル分布(左:100,時間後、右:1000時間後)

トンネル掘削後の地下水面(間隙水圧0の境界)の変化を図4に示します。時間の経過とともに地下水位が低下してゆく様子がわかります。この例では、トンネル上部まで地下水位が低下しています。なお、モデルの両端は水位が固定されています。

300時間後
300時間後
500時間後
500時間後
800時間後
800時間後
1000時間後
1000時間後
図4 地下水面の変化

このときのトンネル壁面付近の変形を図5に示します。なお、変形量はトンネル掘削後の増分です。トンネルが時間とともに沈下してゆくことがわかります。

また、地表面の変形を図6に示します。ここでも時間の経過とともに地表面沈下が進んで行くことがわかります。トンネル直上部における地表面沈下量の経時変化を、図7に示します。

これらの変形は、トンネル壁面からの地下水流出により地盤に収縮変形が生ずる、いわゆる圧密変形に起因しています。

図5 トンネルの変形(左:100時間後,右:1000時間後)
図5 トンネルの変形(左:100時間後,右:1000時間後)
300時間後
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500時間後
500時間後
1000時間後
1000時間後
図6 地表面沈の変形
図7 トンネル直上部の地表面沈下
図7 トンネル直上部の地表面沈下

このように、トンネル掘削は地下水の流出によって、地下水位の低下や地表面沈下を引き起こします。次回は、このような現象を抑制するために、地盤の透水性を低下させる工法を用いた場合について検討します。

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