技術資料
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第2回 ランニングスペクトルが表す震動中の特性変化
Geo-Stickにより得られた加速度時刻歴データからは、これの周波数特性を表すフーリエ振幅スペクトルが得られます。さらに、時間を区切ってこの処理を行うことで、ランニングスペクトルが得られます。
ランニングスペクトルを求めるには、例えば、全加速度時刻歴データのうちの20秒分を、計測開始から0~20秒、10~30秒、20~40秒といったように、10秒ごとにずらして抽出し、それぞれでスペクトルを求めます。これを、縦軸に周期をとり計測時間方向に並べて、値をコンターで表示します。
ランニングスペクトルが示すものは、地震で振動中の建物において、振動の周波数特性がどのように変化しているかです。前回示した例について、1階と4階の加速度時刻歴でランニングスペクトルを描いてみました。
1階に注目すると、時間とともにスペクトルの形状や強度が大きく変化することがわかります。これは、地盤を介して建物に加えられる加速度(力)が時間とともに変化するからです。2つの例を比較しても、1階のランニングスペクトルは異なっており、地震動に依存していることがわかります。
一方、4階ではピークの周期があまり変化せず、振幅の強度が変化する傾向にあることがわかります。これは、4階の振動は建物の振動特性に依存しているためと考えられます。
前回でも示した2つ目の例についても、ランニングスペクトルを求めてみました。1階ではスペクトル分布の時間変化が大きいのに対し、4階では時間変化が小さい点は同じ傾向です。
仮に、4階のランニングスペクトルが大きく変化するような場合には、地震により建物に何らかの損傷が生じたことが考えられます。ただし、より的確に振動中の建物の損傷などを知るためには。スペクトル比を用いる必要があります。次回以降は、このスペクトル比について、詳しく説明します。