技術資料
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第3回 まずは自重解析から
今回からは、地層科学研究所が開発中のG-SUPRAを使って、凍結膨張のシミュレーションを行っていきます。なお、以下の解析では圧力の単位としてMPa、長さの単位としてm、温度の単位として℃、熱量の単位としてJ、時間の単位としてhを用いています。
解析に用いた物性値を表-1に示します。
表-1 解析に用いた物性値一覧
![表-1 解析に用いた物性値一覧](/wp/wp-content/uploads/2023/07/freeze03_01.jpg)
用いたモデルは、図-1に示したような各辺1mの立方体モデルです。最初に、自重状態を作ります。
![図-1 変形に関する境界条件](/wp/wp-content/uploads/2023/07/freeze03_05.jpg)
将来行う凍結膨張解析では、x、y、zの3方向への変形量を調べたいことから、変形の境界条件として原点を含む側面と底面の法線方向の変位を0とするとともに、モデルの上面と側面は表面力境界とし変形が生ずるようにしました。
ただし、自重解析による変形が不均一とならないように、側面では自重による変形が0となるような表面力を加えました。これは次のように求めました。
解析モデルの間隙水圧分布は、自重解析の結果次式となるはずです。φ0はモデル上面の間隙水圧です。
![数式1](/wp/wp-content/uploads/2023/07/freeze03_02.jpg)
また、水平面内の全応力分布は次のようになるはずです。
![数式2](/wp/wp-content/uploads/2023/07/freeze03_03.jpg)
水平変位を0とするためには、水平方向全応力と間隙水圧の差(有効応力)にv/(1-v)を乗じ、間隙水圧を加えた大きさの表面力を加えることになります(図-2)。
![数式3](/wp/wp-content/uploads/2023/07/freeze03_04.jpg)
![図-2 側面の変形を0とするために側面に加える表面力](/wp/wp-content/uploads/2023/07/freeze03_06.jpg)
水に関する境界条件としては、側面からの水の出入りを禁止し、上面と下面で間隙水圧が一定に保たれるものとしました(図-3)。また、熱に関する境界条件としては、上面と側面で熱の出入りを禁止し、底面は温度変化が可能なように温度固定境界としました(図-4)。
![図-3 水に関する境界条件](/wp/wp-content/uploads/2023/07/freeze03_07.jpg)
![図-4 熱に関する境界条件](/wp/wp-content/uploads/2023/07/freeze03_08.jpg)
解析結果を、解析モデルを単一要素とした場合と要素分割した場合について以下に示します。
図-5と図-6が、解析により得られた自重による沈下です。狙いどおり、水平方向の変位が0となっていることがわかります。要素分割した場合でも同様です。要素分割した場合では、図-7と図-8に示すように、間隙水圧や鉛直応力が深さ方向に線形に分布します。次回からは、凍結膨張の解析に取り掛かります。
![図-5 単一要素の場合の自重変形](/wp/wp-content/uploads/2023/07/freeze03_09.jpg)
![図-6 要素分割した場合の自重変形](/wp/wp-content/uploads/2023/07/freeze03_10.jpg)
![図-7 要素分割した場合の要素分割した場合の間隙水圧分布](/wp/wp-content/uploads/2023/07/freeze03_11.jpg)
![図-8 要素分割した場合の鉛直応力分布](/wp/wp-content/uploads/2023/07/freeze03_12.jpg)