数値解析ソリューション

密度流解析

運搬される物質の濃度変化により地下水の密度が変化する、いわゆる密度流の解析を紹介します。この場合は、濃度の変化が地下水流れに影響を及ぼすことから、地下水流れと物質移行を同時に解く必要があります。解析には、Dtransu-3D・ELなどを用います。

密度流解析の支配方程式

以下に、密度流の支配方程式を示します。最初に、地下水流れの支配方程式です。

数式1(密度流解析の支配方程式)

ここに、φ、ρwv Swngはそれぞれ間隙水圧、間隙水の密度、平均流速、飽和度、地盤の空隙率、重力加速度です。また、Kbは空隙弾性定数、kは地盤の透水係数、cは間隙水中の物質の濃度、ρwfは物質の濃度が0のときの間隙水の密度、χは濃度の増加に対する密度の増加を定める係数です。
最初の式には濃度の項が入っていますが、単位時間に単位体積中で生じた間隙水の流入出量の差に、濃度変化に伴う間隙水の密度変化が寄与していることを表しています。
他方、物質移行の支配方程式は次のようになります。

数式2(密度流解析の支配方程式)

vcは分散と拡散による物質の移動速度(流束)、vwは間隙中の水の速度です。間隙水の平均流速vvwには、次の関係があります。

数式3(密度流解析の支配方程式

分散と拡散による物質の流束vcは、Fickの法則に従うものとします。

数式4(密度流解析の支配方程式)

Dは拡散係数であり、次のような形で記述されます。

数式5(密度流解析の支配方程式)

ここに、αTαLは横分散長(間隙内流速方向と垂直方向の分散長)と縦分散長(間隙内流速方向の分散長)、Dmは分子拡散係数、τは屈曲率、δijはクロネッカのデルタです。また、記号(間隙内流速ベクトルの長さ)は間隙内流速ベクトルの長さであり、2次元であれば 数式となります。

密度流解析の例

計算例を紹介します。この解析モデルでは、初期状態で左から右へ地下水が流れています。なお、濃度の増加に対する密度の増加を定める係数 χ を0.2としています。

図1 解析モデル(密度流解析の例)
図1 解析モデル

表-1 解析に用いた物性値一覧

表-1 解析に用いた物性値一覧

結果は動画でご覧ください。濃度の増加により水の密度が増すために下向きの流れが発生し、これに伴って物質の移行範囲も下よりとなっていきます。このように、地下水流れと物質の移行がお互いに影響し合っていることがわかります。

movie1 濃度分布の推移(赤:濃度大)
movie2 地下水流速分布の推移
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