やわらかサイエンス

盛土 ~ 水と粒と地産地消とルール順守が大切 ~(後編)

第130回担当:藤原 靖(2021.11)

盛土は資源の有効利用など環境負荷の面でも気を付けなければならない点があります。また、ともすれば盛土では不適切な行為が行われてしまうことがあり、社会問題を生じています。熱海市の逢初川で大規模な土砂災害もその悲惨な結果です。



左:静岡県熱海市の土石流起点の盛土部崩壊(静岡県)
右:大阪府豊能町の建設残土崩落(毎日新聞社)   

- 盛土は地産地消が理想です -

建設工事では、土を削ったり掘ったりするので、その中の切土と盛土で、土の需要供給ができていれば問題ありませんが、土が余ってしまう場合が多々あります。このような過程でできた土を建設発生土と言います。


山間部の大きな土木工事では切土と盛土で土の需要供給を図り、余分な土砂の運搬を極力少なくしているのが一般的です。まさに地産地消で、環境負荷も少なくなります。一方都市部では需要供給のバランスが崩れ、建設発生土が大量に発生しています。そこで建設発生土を一定の地域内での地産地消が進むように、土砂の用途に応じて基準を設けて利用されています。


建設発生土は、水分、粒径、土の固さなどの基準で判定が行われ、その土の特性に最適な再利用が行われます。区分は第一種から第四種までと泥土の5段階があります。工作物の埋め戻し、土木工事の裏込め、道路工事の盛土、河川堤防、土地造成、鉄道盛土、空港盛土、水面埋立てなどの用途別に基準区分が示されています。


- きちんとした管理を怠っていることがあります -

盛土では空気を追い出し、土を密実なものとし、密度を増加させ、均質性を増し、最も強度の得られる状態に土を締固めるという作業が大切です。実際には最大乾燥密度の90%以上といったような目標を定めて、管理をしながら作業を進めています。ところがこのような土を密実にするような作業を怠ったり、受け入れが許可されていない場所に持ってきたりする事例が全国で生じています。山林等への投棄などの不適正な処理です。


このような行為によって崩落が起きるなど周辺住民の生活安全を脅かしています。全国では建設発生土の崩落による道路通行止め、河道への流入、水源地への流入、ため池への流入、農地への流入などの被害が後を絶ちません。
建設発生土は、公共工事においては工事間利用や受入施設を指定するなどの指定処分という取組が行われ、さらに次のような法律や条例によっても規制されていますが、不適切な事例が後を絶たない状態です。



- 土以外のものが混じっていることがあります -

建設工事では、木や草が繁っている場所を掘ったり、コンクリートやアスファルトでできたものを壊したり、泥水と呼ばれる薬液を使って掘ったり、セメントを使って補強したりすることが一般的です。例えばトンネル工事では掘削中の断面に一時的にコンクリートを吹き付け保護します。再び掘削すると吹き付けたコンクリートが混じった土砂となります。

木片、コンクリート塊、アスファルト片などが混じった土や工事で使用した掘削用泥水やセメントが付着した土になると建設発生土ではなく産業廃棄物となります。分別や廃棄物の除去を行わず、建設発生土として使用すると悪臭の発生、沈下、崩落、アルカリの流出などの問題を引き起こすことがあります。

また河川や湖の底を浚渫(しゅんせつ)した土砂にはダイオキシン類、建設発生土には自然由来の重金属が含まれている場合があります。このような場合は有害な土砂となるので要注意です。



左:森林伐採しての宅地の造成             
右:トンネルの切羽保護のためのコンクリートの吹き付け

建設発生土への産業廃棄物の混合や産業廃棄物の投棄は、意識的な逸脱行為で容認できない行為です。建設発生土は有用な地盤材料であり建設資源であることから有効利用が進められている一方で、不適切な行為が無くならないことは非常に残念です。



左:森林伐採しての宅地の造成            
中:トンネルの切羽保護のためのコンクリートの吹き付け
右:のり面の裏込めに廃棄物を使用した例       
(大阪府環境農林水産部循環型社会推進室産業廃棄物指導課「産業廃棄物による土地造成等の禁止」より抜粋)

盛土 ~ 水と粒と地産地消とルール順守が大切 ~ は如何でしたでしょうか。
盛土は非常に役にたつ技術である一方で、建設発生土や産業廃棄物の取り扱いではコンプライアンスが強く求められる技術でもあります。
町を歩いていて道路工事などで締固め作業に出会ったら、「水と粒はどうかな」と思いだしてみて下さい。