逆解析による物性の同定
3次元有限要素法を用いた逆解析ソフトウェアGeo-Inverse
数値解析を用いた現象の予測では、現象に係わる物性値の選定が結果の信頼性を左右します。 解析に用いる物性値は、文献調査や室内試験あるいは原位置試験に基づき設定されますが、プロジェクトによっては充分な調査や試験が難しい場合があります。 このような場合には、施工中の計測データや長期モニタリングデータに基づき、現象に係わる物性値を逆解析により推定することができます。 地層科学研究所では、有限要素解析を用いて地盤の変形性や透水性などを同定する技術を開発しています。逆解析の手法
有限要素法を用いた逆解析では、物性値を求めたい領域、例えばトンネルの周辺地盤について有限要素モデルを作成します。 最初に物性値を仮定して所定の初期条件や境界条件で解析を行い、原位置で計測している点の値の変化を求めます。 この解析値と実際の計測値を比較し、この差が小さくなるよう、カルマンフィルタや最小二乗法などにより物性値を修正します。 修正した物性値で再度解析を行い、得られた値と計測値を比較して物性値を修正することを繰り返し、収束値を得ます。既知計測点の数や情報量に比べ未知の物性値が多い場合には、適切な収束値が得られないことから、有限要素モデルで物性域をまとめたり、 差分メッシュを用いて未知の物性値の数を少なくするようにします。
変形性の同定Geo-Inverse/DF
トンネル掘削時の変形や斜面の変形、盛土や堤防の沈下量などから、次のような物性値や量を求めます。- 地盤の剛性E、νあるいは体積弾性定数K、せん断弾性定数G
- 剛性の低下率(例えば、αK、βGのαやβ)
- 地盤の強度定数C、φ
- 非弾性ひずみの量(間隙水の移動や熱膨張などによる体積ひずみなど)
透水性の同定Geo-Inverse/PP
3次元浸透流解析を用いて、地盤の透水性を同定します。次のような使い方があります。- 地表面に近い領域の透水性は、計測値としてボーリング孔の水位変動を用い、観測された降雨量を有限要素モデルに加え、解析により得られた水位と計測値を比較し同定します。
- トンネル周辺岩盤の透水性は、計測値として間隙水圧と湧水量を用い、解析値と比較して透水性を同定します。
- 堤体の透水性の同定では、河川の水位変動に対する堤体内の水位あるいは水圧の計測値を解析結果と比較します。
動的物性の同定Geo-Inverse/DY
地震時に記録された基盤面と地表面での加速度の時刻歴データをもとに、地盤の剛性や減衰定数などを推定することができます。 Geo-Inverse/DYでは、両加速度の時刻歴を周波数に変換したフーリエスペクトルについて、計測値と解析値の差を最小とする弾性波速度分布を求めます。 解析には、有限要素法による動的解析を用い、計測値と解析値のフーリエスペクトルから幾つかの周波数成分を選んで比較します。
