コラム

第9回 堤防の損傷個所を推定する

カルマンフィルタで逆解析/第9回担当:里 優(2020.11)


今回は、次に示すような堤防を模したモデルを用います。青色以外の色の付いた8個の盛土領域の内の一つに収縮の体積ひずみを発生させ、モデルに変形を生じさせます。
原因としては、盛土の圧密や土砂の流出などを想定しています。堤防上面に配置した観測点におけるこのときの鉛直変位から、逆解析により体積ひずみ発生した盛土の場所とその大きさを推定してみます。


解析モデル(右側の上から2段目の盛土領域に収縮の体積ひずみを発生させる)

まず、右側の上から2段目の盛土領域に収縮の体積ひずみを発生させ、観測値を設定します。下図では熱膨張係数と記述していますが、単位の温度変化を与えた場合の体積ひずみを表しており、この場合は1%の収縮の体積ひずみを発生させることになります。


ボディ材料値編集ダイアログボックス

カルマンフィルタに関連するノイズの分散は、下図のように設定しました。


ソルバー設定ダイアログボックス

以下に逆解析の結果を示します。まず変形分布の推定ですが、右側の上から2段目の盛土領域を中心に、収縮の体積ひずみの発生が推定されています。


解析結果図(変位)

また、同盛土領域に約1%の収縮の体積ひずみ発生が推定されています。


ダイアログ

今度は、左側の4段目の領域に収縮の体積ひずみを発生させた場合を見てみます。


解析結果図

ボディ材料値編集ダイアログボックス

以下に逆解析の結果を示します。この場合も、変位分布も体積ひずみの大きさもうまく推定できています。


解析結果図

ダイアログ

今回のケースでは、体積ひずみの変化を推定する盛土領域に近接して観測点を設けることができるため、推定の精度が高くなっていると判断できます。観測点の変位としてレーザスキャニングのデータを使えば、実践的な応用が可能と考えます。