
岩石・岩盤の透水試験(その2)
前回は,岩盤を構成する二つの要素である、岩石基質部および岩石亀裂部を対象として、室内において実施される透水試験法について紹介しました。今回は原位置において、岩盤を対象として実施される透水試験法について紹介します1)-5)。
室内試験は、試験費用が安いことおよび試験条件の制御が容易であることから広く用いられていますが、基本的には、岩盤を構成する二つの要素である岩石基質部または岩石亀裂部のどちらかを対象とした試験(要素試験)であり、直接岩盤の透水係数を求めるものではありません。したがって、岩盤の透水係数を把握したい場合は、通常原位置において透水試験を実施することになります。
原位置透水試験は、図-1に示すように、単孔式と多孔式に大別することができ、さらにそれぞれを定常法と非定常法に分類することができます。

図-1 代表的な原位置透水試験法
単孔式透水試験は、試験孔周辺の透水特性しか求められないという問題はあるものの、多孔式透水試験に比べると、安価で比較的容易に実施できることから、原位置において最も多く実施されている試験法です。定常法に属する代表的な試験法としてはルジオン試験、定圧注水試験が、非定常法に属する試験法としては、JFT(湧水圧試験)、動燃式JFT、スラグ試験、パルス試験があります。
1. ルジオン試験(図-21))
パッカーにより区切られた試験区間内に、注水圧力を段階的に上昇させながら注水し、注水圧力と定常注水流量の関係(p-q曲線)からルジオン値を求めることにより岩盤の透水性を評価する。

図-2 ルジオン試験の概念とp-q曲線1)
2. 定圧注水試験
ルジオン試験と同様に、パッカーにより区切られた試験区間内に、注水圧力を段階的に上昇させながら注水し、その定常時の注入流量から透水係数を求める。注水圧力は、岩盤の変形・破壊が生じない程度の低圧とする。
「低圧ルジオン試験」は、ルジオン試験法に準拠しながら、試験区間の圧力制御精度と注入流量の測定精度を高めるとともに、岩盤の変形・破壊が生じない程度の低圧で試験を行うものであり、ルジオン試験よりも定圧注水試験に属すると考えられる。
3. JFT(湧水圧試験)、動燃式JFT
パッカーにより試験区間を区切り、トリップバルブで止めた水をバルブの瞬間的な開放によって測定管内で上昇させ、その水位の経時変化および最終平衡水位を計測することにより岩盤の透水係数を求める。
動燃式JFTは、より透水性の低い岩盤に対して適用できるように装置を改良したものである(図-33))。

図-3従来のJFTと動燃式JFTの比較3)
4. スラグ試験
海外では比較的よく用いられている試験法であり、おもりを水中に投入または引き上げる等の方法によって、孔内水位を瞬時的に変化させ、その水位の経時変化を測定することによって透水係数および貯留係数を求める。
5. パルス試験
透水性の低い岩盤の透水特性を迅速に測定するために従来のスラグ法を改良したものであり、閉塞した試験区間内に急激に圧力パルスを加え、その後の圧力変化を測定することにより透水係数および貯留係数を求める。
多孔式透水試験は、単孔式透水試験に比べると、非常に高価ですが、広域の岩盤としての透水係数を、異方性や不均質性を考慮して評価することができます。
1. クロスホール透水試験(図-42))
注水孔および観測孔の孔内に複数個の注水区間と間隙水圧観測区間を設ける。注水区間において所定の条件で注水を行い、各観測区間において注水に伴う間隙水圧の経時変化を測定することによって岩盤の透水係数および貯留係数を求める。一定圧力で注水する方法、一定流量で注水する方法、正弦波の圧力で注水する方法および矩形状の圧力波形で注水するパルス法がある。広域の岩盤としての透水特性を把握できること、異方性・不均質性を評価できること、水みちとなる割れ目や遮水ゾーンの連続性を評価できることなどの特徴がある。

図-4 クロスホール透水試験模式図2)
2. 揚水試験
揚水井の周辺に観測井を配置し、揚水に伴う水位低下を観測井において測定することにより岩盤の平均的な透水係数と貯留係数を求める。揚水による地下水位が定常状態であると想定して水理定数を求める場合と、非定常状態であると想定して水理定数を求める場合とがある。
今回は、原位置において、飽和した岩盤を対象として、直接的に透水特性を求める試験法の代表的なものを紹介しました。このように限定しても,多くの試験法があることがわかります。したがって、実際に試験を行う際には、それぞれの試験法の特徴をよく理解した上で、目的にかなった試験法を選択することが非常に重要であると思います。
1) 山口嘉一,水戸義忠,木下直人:不連続性岩盤の透水性と調査・試験法,不連続性岩盤と構造物に関する研究報告書,地盤工学会岩の力学委員会,1995.
2) 細谷真一:原位置水理試験の現状と異方性評価の可能性,月刊 地球,Vol.19,No.6,pp.346-352,1997.
3) 張 銘,遠藤秀典,高橋 学:原位置浸透流測定法について(その1),応用地質,第41巻,第5号,pp.293-303,2000.
4) 張 銘,遠藤秀典,高橋 学:原位置浸透流測定法について(その2),応用地質,第42巻,第1号,pp.52-59,2001.
5) 地盤工学会:設計用地盤定数の決め方 -岩盤編-,地盤工学会,2007.