
岩石・岩盤の透水試験(その1)
岩石・岩盤の透水特性を正しく評価することは、土木、環境、資源などの多くの分野において、重要であると認識されています。今回は、岩盤を構成する二つの要素である、岩石基質部および岩石亀裂部を対象として、室内において実施される透水試験法について紹介したいと思います。


図-1 岩石基質部の室内透水試験1)
岩石基質部を対象とした室内透水試験法は、 図-11)に示すように多くありますが、直接透水係数を測定する代表的な方法は、以下の五つです。
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定水位法
供試体の両端に一定の差圧(水位差)を与え、定常状態に達した後の流量(単位時間当たりの透水量)を測定することにより透水係数を求める方法 -
変水位法
ある時間内において、供試体内を水が流れることによる水位の低下量を測定することにより透水係数を求める方法 -
トランジェントパルス法
送水側と排水側のそれぞれに貯留容器を有する試験装置を用いて、送水側の貯留容器に急激に圧力パルスを与え、その後の供試体両端の差圧の減衰(経時変化)を測定することにより透水係数を求める方法 -
フローポンプ法
供試体に流入または流出する流量を一定に制御したときの、供試体両端の差圧の経時変化を測定することにより透水係数を求める方法 -
オシレーション法
供試体の一端に一定の正弦波形を有する間隙水圧変化を与え、他端で得られる振幅の減衰と位相の遅れから透水係数を求める方法
図-1には、その試験法を用いて測定することができる透水係数の範囲が示されていますが、これは、あくまでも目安です。例えば、定水位法を用いて試験を行う場合、より透水係数の小さい岩石に対しても測定できるようにするためには、
- より大きな断面積を有する供試体を用いる
- 試験時間を長くする
- 差圧を大きくする
- 圧力の制御精度や流量の測定精度を向上させる
といった方法が考えられます。もしも、供試体の直径を3倍にすることができるのであれば、断面積が約1桁大きくなり、流量も約1桁増加するので、測定可能な透水係数が約1桁小さくなります
前に述べましたように、岩石の透水係数の分布範囲は非常に広いので(第16回コラム:岩石・岩盤の透水係数(その1)参照)、どの試験方法を用いても、その透水係数の測定範囲には限界がありますので、通常、予想される透水係数の大きさに応じて、複数の試験法を使い分けることになります。定常法に分類される試験法と非定常法に分類される試験法を比較すると、一般に、透水性が低い岩石に対しては後者のほうが有利であることから、透水係数が非常に小さい岩石に対しては、非定常法に分類される試験方法が用いられています。
岩盤の透水性は、基本的には岩盤内の様々な亀裂の透水性によって支配されていますので、亀裂の透水性を正しく評価することは非常に重要です。亀裂を対象とした室内透水試験としては、単一亀裂に垂直応力が作用する場合についての試験(亀裂の透水性~垂直応力関係を求める)とせん断変形が進行する場合についての試験(亀裂の透水性~せん断変位関係を求める)とがあります 図-22))。


図-2 岩石亀裂部の室内透水試験法2)
単一亀裂に垂直応力が作用する場合についての試験法としては、 図-2に示すように、一様流による方法と放射流による方法とがあります。一様流による方法は、縦方向に亀裂を有する供試体に対して、三軸圧縮型透水試験装置を用いて、封圧を作用させた状態で軸方向に水を流し、亀裂の透水性と垂直応力の関係を求めようとするものです。それに対して、放射流による方法は、中央に小孔を持ち、水平割れ目を有する円柱供試体に対して、軸方向に荷重を作用させた状態で放射状に水を流し、亀裂の透水性と垂直応力の関係を求めようとするものです。国内では前者を用いた試験が多く実施されているのに対して、海外では後者を用いた試験のほうが多く実施されているようです。
1) 地盤工学会:設計用地盤定数の決め方 -岩盤編-,地盤工学会,2007.
2) 山口嘉一,水戸義忠,木下直人:不連続性岩盤の透水性と調査・試験法,不連続性岩盤と構造物に関する研究報告書,地盤工学会岩の力学委員会,1995.