やわらかサイエンス

酸素を生み出す石-太古から生き続けるストロマトライトの話-

第25回担当:冨永英治(2005.06)

初夏も近づき、樹木の緑の鮮やかさに誘われて山にハイキングに行くと、空気のおいしさに感動します。私たちが日頃当然のように吸っているこの空気中の酸素ですが、一体どのくらい昔から地球上に存在していたのでしょうか?


その謎を解く手がかりとして、光合成生物の存在があります。皆さんもご承知のように、酸素は光合成を行う生物がつくりだします。ということは、光合成を行う生物がどの位前から地球上にいたのかを知ることでこの謎は解けるはずです。


今、科学者たちの間で有力とされているのはシアノバクテリアの存在です。シアノバクテリアは、藍藻(らんそう)と呼ばれる藻類の一種として分類されていましたが、他の藻類と違い原核単細胞生物のため、現在では細菌として分類されるようになっています。 このシアノバクテリアは今から35~27億年前から存在し、光合成で生み出した酸素を海水中に放出していたと考えられています。ですので、地球上に大量な酸素が形成されるようになったのもこのシアノバクテリアが活動を始めた35~27億年前位と考えられています。シアノバクテリアは、細胞から分泌する粘液で、海水中に浮遊する微細なミネラルの粒子を捕らえ、炭酸カルシウムと結合させて、ストロマトライトというドーム状の石をつくります。


化石のストロマトライト
化石のストロマトライト
http://www.lalanet.gr.jp/nsm/stromaotlite.htmlから2005/5/22アクセス)

実は、このストロマトライトは現在も生息しています。西オーストラリアのシャークベイという海岸で生息しており、この地域は世界遺産として指定されています。このようにストロマトライトは化石だけでなく現世にも存在するのでその生態などもわかってきています。


現世のストロマトライト
現世のストロマトライト
http://www.lalanet.gr.jp/nsm/stromaotlite.htmlから2005/5/22アクセス)

日中は光合成により酸素を発生させ、夜は光合成を停止させ、その代わり粘液で堆積物を固着させます。翌日、固着された堆積物の上で日中は活動し、また夜になると光合成は停止させ、粘液で堆積物を固着させます。このようにストロマトライトの外表面に住み着いているシアノバクテリアは、外側へ石の体積を増やし、その速度はサンゴ礁の形成速度の約10分の1で、1年間に平均0.4ミリメートル程と見積もられています。シアノバクテリアの大きさは、長さ約1~10マイクロメートル、直径は約5マイクロメートルです。高さ30センチメートル、直径20センチメートルの石をつくるには、1000~2000年かかったと推定されています。


ストロマトライトの成長
ストロマトライトの成長
http://www.mus-nh.city.osaka.jp/tokuten/2002plantevo/virtual/

ストロマトライトは1日周期で活動し、1日1枚の堆積層を作り出します。また、岩体自体は太陽に向く方向に成長します。この成長方向は地軸の傾きによって変化する太陽の高度を反映して、年間1周期の緩やかなサインカーブを描くことになります。この日年間周期性を利用して、化石のストロマトライトにおいてこの1周期内に含まれる層の数を数えると、その時代の1年の日数を知ることができます。


その結果、例えば8億5千万年前の化石ストロマトライトは、1年が435日であったことを記録されているそうです。このことは、地球の自転が今よりも速かったことと関連しています。




参考資料
■東京大学総合研究博物館ニュース
http://www.um.u-tokyo.ac.jp/museum/ouroboros/01_02/ganseki.html
■大阪市立自然史博物館第31回特別展
http://www.mus-nh.city.osaka.jp/tokuten/2002plantevo/virtual/
■新潟県立自然科学館
http://www.lalanet.gr.jp/nsm/stromaotlite.html