コラム

先端部が孤立するパッカー式間隙水圧計

問題解決のヒント/第2回担当:里 優(2015.05)


皆さんは、地下水流れの解析結果で、図-1に示すようなトンネル周囲の間隙水圧分布図をご覧になったことがあると思います。トンネルの掘削により周囲で間隙水圧が減少し、地表面では地下水位が低下します。この解析結果が妥当なものであるかどうかは、トンネル周囲の間隙水圧とその経時変化を計測して解析結果と比較すればわかります。そこで、トンネル周壁にボーリング孔を設け、パッカー式間隙水圧計でこれを計測することを考えます。


図-1 トンネル掘削による水位変動
図-1 トンネル掘削による水位変動

最も簡単な方法は、図-2の上段のように、水抜き管を加えて先端部を密閉したパイプにパッカーを取り付け、ボーリング孔に挿入するものです。水抜き管から地下水が出てきたらバルブを閉じて、管内の圧力が間隙水圧とバランスするまで待ちます。この方法では、湧水量が多い場合には問題ありませんが、難透水性の地盤などでは、配管内の圧力が間隙水圧に達するまで長い時間がかかる場合があります。


そこで、加圧管を加え、ここからポンプにより強制的に水を注入し、間隙水圧程度まで先端部と配管内の圧力を上げておいた上で配管のバルブを閉じ、配管内の圧力が間隙水圧とバランスするのを待つことが考えられます(図-2の中段)。これで、配管内の圧力が間隙水圧に達するまでの時間を短縮することができます。しかし、ボーリング口元に圧力計があるため、例えば斜めのボーリングに設置した場合には、圧力計と先端部の高さの差の分だけ計測された圧力を補正してあげる必要があります。また、下向きのボーリング孔に設置した場合で、ボーリングの口元までの水位に相当する圧力より、計測部の間隙水圧が低い場合には、配管内が負圧になってしまい計測ができません。これらを解決する方法は、先端部に圧力計を設けた上で先端部を配管から孤立させることです。


では、どうやって先端部だけを孤立させることができるのでしょうか。


図-2 パッカー式間隙水圧計の構造
図-2 パッカー式間隙水圧計の構造

これには逆止弁を使う方法を考案しました(図-2の下段)。水抜き管と加圧管の両方の先端部に近い側に、逆止弁を設置します。逆止弁は、加圧するとポンプから水抜き管へ水が流れ、圧力を下げると逆流しない方向とします。逆止弁が開く差圧は、水抜き側では想定される間隙水圧に比べ大きな値とし、加圧側では間隙水圧より充分小さく、先端部と口元の高さの差に相当する水圧よりも大きな値とします。


まず、両側のバルブを開けてポンプから水を注入し、配管と先端部を水で満たします。このとき、先端部の圧力は、水抜き側の逆止弁の差圧(間隙水圧より大きな圧力)と加圧側の逆止弁の差圧の差の圧力まで加圧されています。ポンプによる水の供給を止めると、まず水抜き側の逆止弁が閉じます。さらに、少しポンプの圧力を下げると今度は加圧側の逆止弁が閉じ、この結果先端部が孤立します。先端部は間隙水圧より高い状態となっており、この部分から地盤内へ水が吐き出されることで、この部分の圧力が速やかに間隙水圧とバランスします。


このようにしてできあがったのが、図-3のような間隙水圧計です。この間隙水圧計では、例えば斜め下向きのボーリング孔やトンネル天端部に設けたボーリング孔などでも、設置する方向を気にせず計測を行うことができます。また、孔内に設置後、より短い時間で間隙水圧を計測できます。


図-3 パッカー式間隙水圧計
図-3 パッカー式間隙水圧計

地盤内の間隙水圧と先端部がバランスするまでの時間は、地盤の透水性に依存します。このため、パルス状に先端部の圧力を上げ、先端部を孤立させた後に間隙水圧とバランスするまでの時間と圧力の関係を計測しておけば、地盤の透水性を相対的に評価することもできます(図-4)。また、先端部にある水の量が小さいため、先端に温度センサや濃度センサを設置すれば、トレーサ試験などでも用いることができます。さらに、配管部が切り離されており水圧変動に伴う配管部の変形を考慮する必要がないため、メカニカルパッカーと組み合わせて、水圧変動に伴う本体の変形を最小化できれば、例えば地震時の間隙水圧応答など、極めて速い水圧変動も検知できる可能性があります。


図-4 計測先端部における圧力変化の一例
図-4 計測先端部における圧力変化の一例

トンネルにおける注入工の効果の評価など、地盤と間隙水圧の相互作用を検討する際に、この間隙水圧計を是非ご活用ください。