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| 第06回(2001.10):木下直人 |
| 岩石の線膨張率測定(その1)大気圧下における測定 |
| 前回述べましたように、高温下あるいは低温下において岩盤地下を利用する場合には、掘削時における岩盤の安定性を確保するとともに、岩盤地下利用時に作用する熱応力に対する安定性を確保することが重要になります。熱応力は、岩盤の熱膨張率に比例します。したがって、岩盤の熱膨張率は、低温下あるいは高温下における岩盤の力学的安定性について検討する場合の、最も重要な物性値の一つです。このように、熱膨張率は岩石の基本的な物性の一つであるにもかかわらず、今まで、その試験方法については十分に検討されておらず、国内では、JISや学会基準は存在しません。 |
| 一般に、熱膨張率は、ある圧力下における、温度変化に伴う長さまたは体積の変化率として表され、それぞれ線膨張係数、体積膨張係数と呼ばれています。岩石の熱膨張率の測定には、通常「押棒式」と呼ばれる方法が用いられています。この方法は,図−1に示すように、溶融石英でつくられた試料台の端部と検出棒(押棒)のあいだに試料を挿入し,温度変化に伴う試料長さの変化を検出棒の変位として差動トランス型変位計で測定するものです。 |
| 岩石の熱膨張率の測定に、金属材料を対象にした測定装置をそのまま使用する例が多くみられますが、その場合、例えば、直径5mm、高さ20〜50mmといった小さな供試体を用いて測定を行うことになり、以下のような問題が生じます。 |
| (1)岩石を構成する鉱物の粒径が大きい場合測定値がばらつく 図−2に示すように、鉱物により熱膨張率は大きく異なります。したがって,供試体の寸法が小さいと、鉱物の集合体としての岩石の熱膨張率が正確に求められなくなり、測定値がばらついてきます。 |
| (2) 供試体の成形が困難 岩石を構成する鉱物の粒径が大きい場合には、成形時に供試体に微小き裂が発生し、測定値に影響を与える恐れがあります。 |
| (3) 含水状態の制御が困難 岩石の場合には、力学特性と同様に、熱膨張特性も含水状態によって異なる場合があります。例えば、低温下における岩石の熱膨張特性を調べる場合、間隙内に水が存在し、それが凍結する場合と、間隙内に水が存在しない場合とでは、熱膨張挙動が全く異なります。したがって、熱膨張率の測定を行う場合には、予め所定の含水状態にしておき、かつ試験中もその状態を保持する必要があります。このような場合、供試体が小さいと、含水状態を一定に保つことは非常に困難です。 |
| 実際に、直径5、10、20、30mmの4種類の花崗岩供試体を用意して、高温下における線膨張係数を測定し、比較してみたことがありますが、直径10、20、30mmの供試体の測定結果はほぼ一致したのに対して、直径5mmの供試体だけは異なる結果が得られました。私は、基本的には、直径20mm、高さ200mmの供試体を用いて測定を行ってきました。 |
| 岩石の熱膨張率の測定を行う場合、昇温速度および降温速度をどうするかということも重要な問題です。RichterとSimmons1)は、適切な昇温・降温速度で測定することが、線膨張係数を正確に求める上で非常に重要であることを指摘し、研究の初期においては5℃/minとしていましたが、その後、それは明らかに速すぎ(昇温速度が速すぎると、供試体内に温度差が生じ、試料内部に微小き裂が発生することにより、大きめの熱膨張率の値が得られてしまう)、2℃/min以下にすべきであるとしています。その結果を参考にして、その後の測定では、昇温・降温速度を2℃/minとしている例が多くなっています。しかし、供試体の大きさが異なれば、供試体全体が一様な温度になるまでの時間も異なることは明らかであり、そのような試験条件の違いを無視して、いつでも昇温・降温速度は2℃/minで問題ないとしてしまうのは適切でないと考えられます。RichterとSimmonsは、直径10mm、高さ45〜50mmの供試体を使用していましたので、それと同じかまたはそれより小さい供試体を用いる場合には、2℃/minとすることは全く問題ないと考えられます。しかし、それより大きい供試体を用いる場合(高温において一軸圧縮試験等を行う場合も含む)は、2℃/minとすることは適切でないと考えられます。私は、線膨張係数の測定を行う時は、直径20mmまたは30mmの 供試体を用いていましたので、昇温・降温速度は30℃/hとしていました。また、高温下で力学試験を行うときは、直径50mmの供試体を用いていましたので、昇温速度は20℃/hとしていました。 |
| なお、高温下岩石の大気圧下における熱膨張特性に関する既往の測定データに関しては文献2)に、低温下におけるそれに関しては文献3)にまとめられています。 |
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参考文献
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